菊地成孔 Archive
菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラール@Bunkamuraオーチャードホール(2008.12.06)
菊地成孔は、昨年からBunkamuraオーチャードホールで12月はじめに2日連続のコンサートをしています。去年はUA×菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールで、今年はダブ・セクステットとペペ・トルメント・アスカラールでした。
私は、去年はUA×菊地成孔にだけ行きました。感想としては、なぜか「cure jazz」に収録されていない「バードランドの子守唄」が良かったです。これはライブに来た人だけが聴けるボーナスみたいなものなのかな。すごく良かっただけに敢えてアルバムに入れないのがにくい。席は私は先行予約で取ったのですが、割と早い段階で満席になっていました。
さて今年はぺぺにだけ行くことにしました。チケットぴあに行って空き席を確認してチケットを買ったのですが、発売開始からかなり経っていたので、1階席だとかなり後ろの方になってしまいます。そこで2階席の舞台すぐ左上の、横一列に並んだ席を選んでみました。私が座ったのは前から2番目の席で、演奏者がすぐ左下に近く見えて良かったです。ただ、目には楽しかったのですが、その分音響は犠牲になっていたかも。ちょっと不明瞭というかこもりぎみの音だったかもしれません。菊地成孔がしゃべっていた内容もところどころ聞き取りづらかったりしました。
開演前や幕間の休憩時間には、ホールのロビーで菊地成孔が2日間の音楽に合わせて選んだというワインやシャンパンが飲めます。ただしグラス1杯1200円から。結構多くの人が飲んでました。これは欧米のオペラハウスなどでは普通にあるらしいです。ワインの品種とかを考えると割安なのかそれとも高いのか私には判断できませんが、私は普段一杯1200円もするようなお酒は飲まないので、高いという感覚があり、飲みませんでした…。
菊地成孔本人が考えているのか、優秀なブレーンがいるのかわかりませんが、観客にドレスアップを奨励して非日常感を出し、このお酒のほかにもいろいろと仕掛けがあって、ビジネスうまいなーと感心しました。いやいい意味で。パーカー万年筆とタイアップして、菊地成孔が万年筆で楽譜とかあとレストランのメニューとかいろいろ書いたメモが展示されていたり。私は今回行きませんでしたがダブ・セクステットの方はスーツメーカーとタイアップしているので、その展示もあったし。ほかにも最新アルバム「記憶喪失学」のアルバムジャケット原画が展示されているらしかったので見たかったのだけど、どこにあるのか分からず。また一般的なコンサートのように書籍やCD等の販売もありますが、ここで何か買った人は菊地成孔にコンサート終了後サインしてもらえます(並ぶ人はすごい行列を覚悟しないといけませんが、本人はもっと大変だよなあ。タフだなあ)。
入場すると、この2日間のために作られた冊子がもらえるのですが、それにはQRコードが載っていて、コンサート終了後に携帯で読み取るとセットリストが表示され、その中の何曲かは着うたとして有料でダウンロードできます。冊子は現在の菊地成孔の各種活動がまとめてあり、そのほか2夜の楽器編成とかそれぞれの楽器の担当者が書いてあったり。私もビオラとチェロあたりは見た目では分からないのでなるほどーと思いました。ぺぺの編成は、サックス等の菊地成孔のほかは、バンドネオン、バイオリン2人、ビオラ、チェロ、ベース、ハープ、パーカッション2人、ピアノ。
ペペ・トルメント・アスカラールの一番最初のコンサートは天王洲アートスフィアというところで行われたのですが、そのとき行ってなんだこりゃ、すごいわと思ったなあ。その後毎回ではないけれどちょくちょくコンサートに通い、九段会館や歌舞伎町クラブハイツなどで見てきました。今年の夏には日比谷野音でスカパラとの対バンも見ました。このときは菊地系の人とスカパラ系の人で服装が全く違うのが面白かった。前者はワンピースにハイヒールとかで、後者はTシャツにジーンズとか。後者のほうが人数的にはずっと多かったです。
私はライブに行ったレポを書くたびに思うんだけど、あんまり耳が肥えてないし音楽にかんするボキャブラリーがないので、音楽そのものについてはあまり書けない。今回も、席がやや特殊な場所であったことによる音響的問題と演奏を切り分けて聴くことができないし。演奏についても書ければいいなと最近とくに思うのだけどね。10年程度習ったエレクトーンは結局音楽について何か書くための役には立っていない。かろうじて言えるのは、ぺぺはまあ菊地成孔がばりばり吹くタイプの演奏ではなく、ストリングス等の不協和音とかラテンな雰囲気を楽しむものなので、サックスのみを期待していくと期待はずれになるよねというのと、今回もアンコールの最後に歌っていたけど、声につやもないし、うまくないし、菊地成孔の歌だけはどう考えても擁護しがたいということくらいだ。
帰りに渋谷の東急プラザに入っているロシア料理店ロゴスキーで食べて帰りました。渋谷駅を見下ろす景色がいいしそれほど高くないし内装も昭和レトロで面白く、コストパフォーマンスのいい店でした。お酒を一杯ずつ飲み、2人で4品くらい頼んで6000円程度です。この店は日本最古のロシア料理店らしく、店の入り口のところに昭和30年台の渋谷駅でロゴスキーの看板が写っている写真がかけてあります。
セットリスト
以下のセットリストは上記で触れた冊子のQRコードを読み込んで携帯に表示したものを書き写しています。ドコモの携帯ではWebからのコピーペーストはできないのだ。(著作権保護のためらしいが、そうだとしたらバカバカしい話だと思います)
1st set
1.即興~夜の全裸
2.京マチ子の夜
3.映画音楽メドレー~映画『バターフィールド8』バターフィールド8のテーマ~エアーコンディショナーのTVCMの悪夢~はなればなれに~クイズ番組のTVCMの悪夢~映画『アルファビル』悲しきワルツ~ソニア・ブラガ事件
2nd set
4.即興~プラザ・レアル
5.大天使のように
6.航空会社のTVCMの悪夢
7.儀式
8.バンド・ネオンソロ
9.ルペ・ヴェレスの葬送
10.映画『8 1/2』~それから……(ワルツ)より
アンコール
11.メウ・アミーゴ・トム・ジョビン
12.恋とは何か貴方は知らない (最後の方でエレナー・リグビーが混ざっていた。yuco追記)
ペペ・トルメント・アスカラールのアルバム
ペペ・トルメント・アスカラールのアルバムは以下の3枚。すごく正確に言うと本当は「南米のエリザベス・テーラー」は含まれない。「南米~」は菊地成孔単独名義で、このアルバムを演奏するためにメンバーを募ったのが、ペペ・トルメント・アスカラールなので、「南米~」のあとにぺぺができたという形です。このアルバムの曲もコンサートでよく演奏しています。
» 記憶喪失学
» 野生の思考
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南博3Days(1日目:Reunion)@新宿ピットイン (2008.11.1)
11月1日は、昼から東京都庭園美術館で海野弘の講演会を聴き(これについてはあとで書く)、その後にじむさんと目黒駅近くで個人サイト運営の話とかあるいはもっと微妙な話とかをしたあと新宿に向かった。海野弘の講演も面白かったのだが、その後ライブの迫力の前には消し飛んでしまった。
演奏は全体的にノリがよく迫力のある感じで進んだ。BOZO@新宿ピットイン (2008.10.30)のときとピアノとベースの演奏者は同じで、ドラムとサックスが違うんだけど、まあ曲目の違いもあるのだろうけど、この日のほうが全体的に硬質でメリハリのある演奏だと思った。菊地成孔のサックスが聞きなれていて好きだからかもしれないが、個人的にはこちらのほうが好み。
最後、アンコールの曲は超ノリノリで終わったあと南さんを除く3人が「やったぜ」という感じで握手していて、彼らにとっても会心の演奏だったのだろう。たとえ同じメンバーが演奏しても、いつもこのようになるわけではないと思う。南さんのピアノも、ピアノからこんな音まで出るんだという驚きがあった。ライブの、あの何かが一致して流れ出す瞬間というのは一体なんなのだろう。このためなら立ち見の足の痛みも甘受せざるを得ない。
そのアンコールの前の曲は菊地成孔の曲だと思うんだけど、聞き覚えがあるのにタイトルが思い出せなくてつらい。私が普段曲名を覚えずにいつも適当にかけっぱなしにしているから、ヴォーカルの入っていない曲はいつまで経っても覚えないからなのだけど。その曲のメインのフレーズをずっとアレンジしながら繰り返すのは圧巻だった。しかし私は音楽に対するボキャブラリーが足りない。歯がゆい。ライブの感覚というのは時と共に薄れてしまうから、せめて言葉で記憶を定着させたいし、ライブで演奏した曲目が分かれば、その曲を家でかけて反芻したいんだけど。(その後ダブセクステットの「The revolution will not be computerized」に収録されているSusan Sontagという曲だと判明)
セットリスト(新宿ピットイン南博3days初日 - Ma Ligne de chanceより引用。カッコ内は作曲者)
1st
Taro ASO(南さん)
Parla(菊地さん)
サブプライム(南さん)
アンジーディッキンソン(南さん)2nd
UNTITLED BOSSA(南さん)
バラク・オバマ(南さん)
CAROLINE CHAMPETIER(菊地さん)
SUSAN SONTAG(菊地さん)encore
モンキーマッシュダウン(菊地さん)
MCも面白かった。南さんは開口一番「みなさんほんとは菊地くんのしゃべりが聞きたいんでしょう?」と笑いを取る(ちなみに菊地成孔は最後まで客席に向かっては一言も話さず)。南さんは時々「ブッシュは本当にいかんね」とかときどきアメリカ政治批判を曲の合間にするのだけど、この日もそうだった。そのほか「先ほどのは、タロー・アソーという曲です」「先ほどの曲はサブプライムです。安月給で高額のローンを組まされ、家を失った庶民の悲哀が伝わりましたでしょうか」だとか独特の調子で話す。この日好きな女優だと言っていたアンジー・ディキンソンについて全く知らなかったので家に帰ってから少し調べたが、バート・バカラックと結婚していたこともあるセクシー女優のようだ。南さんは「脱ぐようで脱がないような、脱がないようで脱ぐような人」と言っていた。
まあやっぱり菊地成孔が来るピットインは、普段の、人が入っても8割程度で立ち見が出ることはないピットインとは全く違っていて、もう人大杉なのは2年以上前に書いたのと変わらない。基本的に菊地成孔はもうこの規模の会場で見るべき人ではないと思っているので、先日ピットインであった菊地成孔3daysとかは華麗にスルーした。しかし、この日11月1日にチケットぴあに行ったら12月6日にBunkamuraオーチャードホールで行われる菊地成孔とペペ・トルメント・アスカラールのチケットは取れた。それも2階の端ではあるがかなり舞台に近い良い席だった。昨年12月に行った、同じ会場でのUA×菊地成孔(私は特別先行予約で500円余分に払って1階のわりと前の方の席を取った)が、UAファンもいたのだろうがかなり早い時点で完売していたことを考えると、今ならライブハウス以上ホール未満くらいのキャパの会場がふさわしいのかなー。
で今回は、mixiの南博コミュに3daysの情報が出ているのを見て10月15日に電話したのだけど、菊地コミュなどには情報が出ていなかったので、たぶん菊地ファンはまだ動いてはいまい…と思っていた。甘かった。この予約の電話をしたときに「予約番号はないんですか?」と訊いたが「ありません」と言われた。しかしその後店頭でチケットを引き換えたときには、127番と書いてあって、その番号ではまあ座れないんだよね。電話予約したときに何番か分からないのかなあと思う。と、そんなことを、会場に入って立ち見が確定して演奏が始まる前まではさんざ考えていて、菊地成孔が来るピットインにはもう行かない!とか思うんだけど、終わるとやっぱり行ってよかったと思ってしまう。
この日のメンバーはREUNIONと名づけられているが、南さんのサイト内にその理由が書かれている。
「REUNION」と名付けたのは、理由があって、アメリカ帰国後、最初に選んだ
HIROSHI MINAMI QUARTETのメンバーは、実はこのメンバーだったのだ。だが、どういういき
さつか忘れたが、フロントが竹野氏に変わった。これは、誤解を招かぬように書いておくが、
僕が菊地氏とケンカしたとかそういうことではなくて、何かの加減でそうなったということです。
あの当時から菊地氏は超多忙だったということも理由かもしれない。仲が悪くなったのではないこ
とは、帰国後の菊地氏との演奏活動など考えくれればお分かりだと思う。特に、EWEから出した
TRIOプラスSTRINGSの二枚のアルバム、「Touches&Velvets」「Elegy」は、菊地氏のプロ
デュースによるもので、菊地氏のプロデューサー能力を遺憾なく発揮した音楽です。また話しがそ
れました。つまりREUNIONとはそういう経緯で付けた名で、勿論メンバー全てが、僕の帰国当
時、1994年頃から比べれば、活動範囲、音楽性、その他諸々比べようもないくらい有名になって
いますが、今ここで、この四人が集まることは、ある意味大きな祝祭性があると思い、3DAYSの
最初の日に、このメンバーで演奏することにした。
Reunion
南 博(P)
菊地成孔(Sax)
水谷浩章(B)
芳垣安洋(Ds)
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菊地成孔が建築雑誌(建築学会誌)の巻頭コラムを書いている件
菊地成孔のサイトの予定表にも、菊地成孔マネージャーの速報にも掲載されていないようですが(一般に販売していない雑誌だからかもしれませんが)、『建築雑誌』という日本建築学会の学会誌がありまして、その巻頭コラムは交代でいろいろな人が1ページ書いているのですが、10月号の巻頭コラムは菊地成孔です。タイトルは「落ち着かない都市」。目次のページを見ると分かると思います。
内容は、ここ最近菊地成孔がよく言っている都市論というか、基本的に秋葉原的なものはこの人にとって敵なのだけど、最近は渋谷という秋葉原とは対極にあったはずの街まで秋葉原化してるよね、秋葉原から最も遠い街であったはずの自分の住む新宿さえも秋葉原化している。建築の人はどうか日本の秋葉原化を止めてください(笑)みたいな話。建築界という彼にとってはアウェイな場所で書いているので、あからさまに秋葉原をイヤがるのは避けているけど、普段この人の発言を追っているとまあ嫌いなんだろうなーと思う。
そういえば、『趣都の誕生 萌える都市アキハバラ』なんて本が2003年に出てました。この本では渋谷は建築的に秋葉原とは対極にある街だという説明をされていましたが、著者の森川嘉一郎(建築学者)は、現在の渋谷と秋葉原をどう見るのかなとも思ったり。
編集長の五十嵐太郎という人は、古くから「Twisted Column」というブログをやっていたりします。日本の建築系では最古の部類で、たぶん前世紀からやっているのではないでしょうか? なので割とネット親和性高いというか、建築の世界以外の現代アートとかサブカルチャーとかも好きな人なので、人選はこの人の好みではないかと思います。
五十嵐太郎が編集長になってから、いわゆる普通の建築の発想とは離れた特集もやっていて、例えば「建築雑誌オールレビュー [建築雑誌]4月号」で紹介されているマンガ喫茶のフィールドワーク、Charlieこと鈴木謙介氏へのインタビューに平野啓一郎のコラムが載っているという号もあったりしました。
菊地成孔に話を戻しますが、菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラール (メンバーチェンジしましたね。夏にスカパラと対バンやったときに見ましたが、南博がいなくなっているのがちょっと残念)の新アルバム『記憶喪失学』は10月29日発売ということで、こちらも楽しみです。
» 記憶喪失学 (菊地成孔とぺぺ・トルメント・アスカラール)
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