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「第10回Wikiばな―知の越境、そして、すばらしきムダ知識へ」に参加してきました (2010.6.12)

カテゴリー : 舞台もの・イベント — 2010/06/14

第10回Wikiばなに行ってきました。

当日は早めに家を出たものの、会場となるIIJ大会議室の場所が分からず、神保町の駅を降りて九段下の方に歩いていってしまい、間違えたことに気づいたが正しい方向が分からないのでGoogleマップに頼り、会場に近づいたが本来の建物の隣のビルと間違え、何箇所かの入り口から入り「どうしてこの建物はエレベーターで2階以上に行けないの?」といぶかっていたら開始の13時半になってしまい、ほそのくん(@h12o)に電話して訊いたら建物が間違っていることが分かり、やっと会場入りして少し遅刻しました。

内容に関しては、すでに「かたつむりは電子図書館の夢をみるか」さんのすばらしい(そして速い)まとめ(第一部第二部)があります。そのほか概略を知りたい人は、内田さんのプレゼン岡本さんのプレゼンがすでに公開されています。なので私は、思いついたことを断片的に書いていくことにします。

遅刻して最後列に座ったこともあってプレゼンがあまり読めず、私は聴覚より視覚から情報を得るタイプの人間なので、スライドの補助無しにスライドと共にプレゼンするタイプのしゃべりを聴くのが結構苦手なのと、内田さんと長神さんのプレゼンについては、著書(『科学との正しい付き合い方』『予定不調和』)は事前に読んできたので、それまで知らなかった情報という意味では岡本真さんのプレゼンが印象に残りました。

ACADEMIC RESOURCE GUIDE (ARG)は見たことがあったし、ヤフーに勤めていた人がやっているらしいということも知っていましたが、これをどういう人が、どのような考えのもとに運用しているのか分かったということ、ヤフー知恵袋のプロデューサーをされていた体験談から、Q&Aサイトの設計・運用に関する話、思い描いていた理想像と実際の使われ方のギャップ(思っていたより嫁姑などの小町的な人生相談とか今晩のおかずのような質問が多かった、Q&Aサイトの問題点として、質問者はある事柄について知らないから質問するのに、最もよかった回答を選ばないといけない、など)が興味深かったです。

内田さんと長神さんの発表と活動についてはたださんのまとめになるほど!と思いました。

ところで内田さんと長神さんはふたりとも「サイエンス・コミュニケーター」という肩書なんだけど、以前から「コミュニケーターってなんだかよくわかんねーな」という気がしていた。いや、肩書というのはカッコいいベクトルが必要なので、これはこれでいいけど。今日の話を聞いていて、ようするにマーケッター兼営業なんだなと思った。商材は科学そのもの(または「科学的××」なもの)。

内田さんの活動はそもそもサイエンスに興味がない層へどうやってサイエンスを「売って」いくか(IT業界的には以前のMicrosoft的商法)、長神さんはアーリーアダプターにコンタクトしていかにしてエバンジェリストを育てるか(Apple的商法?)。マーケティングとして捉え直すといろいろ共通点が見えてくると思った。

LTについては一点だけ。ヨコタンの発表「女子力Hacks」が大いにウケていて、この件でヨコタンを責めるつもりは1ミクロンもないことをあらかじめお断りしておきますが、「女性というものはプライバシーのような近代的な概念が通じない存在」というような前提が共有されているから起こる笑いだよなあ、とも。Wikiばなは毎回女子率1割くらいだし、「ギークカルチャーにおける女性の立ち位置」について考えてしまいました。

会場にいる人およびustreamで見ている人による、ハッシュタグ#wikibanaをつけたtweetというのは、以前の第7回Wikiばなと変わらず行われていたのだけど、tweet数は第7回よりも少なめでした。参加者がWeb、IT系ではなくサイエンス系の人が多かったのかも。当日の#wikibanaつきtweetのまとめは第十回Wikiばな/#wikibana/20100612にあります。

私はtwitterをいつもウェブから使っているのだけど、プレゼンを聴きながら#wikibanaのハッシュタグを追っていたら、突然検索結果が表示されなくなったことが数回ありました。どうも同じIPから多数の人が同じ検索をしているのがスパムと思われてブロックされたらしく、あなたが普通に使っているならこちらのメールフォームからそう書いて送ってねという窓口を示されたので、「イベントだから同じ無線LANから多くの人が接続してイベントのハッシュタグを追っている。怪しいことはしていないので解除してくれ」というメールを英語で書いたりしました。でもその間もクライアントからの人は普通に投稿していたようだし、そもそも「検索をブロックされた」とtwitter上で騒いでいたのが私一人だったので、よくわかりませんが……。

最後になりましたが、発表者のみなさん、スタッフのみなさん本当におつかれさまでした。特に、代表者のshinoさんと、5月末に結婚して新婚旅行から帰ってきて早々に、会場を提供してくれたIIJ社の社員として会社側との接点に立ってくれたほそのくんに感謝です。

科学との正しい付き合い方 (DIS+COVERサイエンス)

著者/訳者:内田 麻理香

出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン( 2010-04-15 )

新書 ( 288 ページ )



予定不調和 (DIS+COVERサイエンス)

著者/訳者:長神 風二

出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン( 2010-04-15 )

新書 ( 272 ページ )


第10回Wikiばな「知の越境、そして、すばらしきムダ知識へ」が行われます

カテゴリー : 舞台もの・イベント — 2010/06/05

私がたびたび出席したりスタッフをしたりお世話になったりしているイベント、Wikiばなが6月12日に東京都内にて開催されます。

最近DIS+COVERサイエンスシリーズとして出版された、『科学との正しい付き合い方』著者の内田麻理香さん、『予定不調和』著者の長神風二さん、そして岡本真さんが、科学や専門知・公共知(って私も何なのかよく分かっていませんが、集合知をテーマとした前回のWikiばなからの流れのようです)について話をされ、そのほかライトニングトークも行われるようです。

詳しい情報と参加申し込みは、第10回Wikiばなのページからどうぞ。

科学との正しい付き合い方 (DIS+COVERサイエンス)

著者/訳者:内田 麻理香

出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン( 2010-04-15 )

新書 ( 288 ページ )



予定不調和 (DIS+COVERサイエンス)

著者/訳者:長神 風二

出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン( 2010-04-15 )

新書 ( 272 ページ )


第10回Wikiばな「知の越境、そして、すばらしきムダ知識へ」

West Side Story@Palace Theater

カテゴリー : アメリカ生活,舞台もの・イベント — 2009/12/29

先日ニューヨークで、現在再演しているWest Side Storyを観てきました。

当日(土曜日)の朝になって昼公演を見ようと思い立ったので、タイムズスクエアのtkts(ミュージカルの当日券が余っていれば割引で買える場所)に向かったのだけど、tktsは長蛇の列で、しかも電光掲示板を見る限りはWest Side Storyの文字はなかった。でもtktsのすぐ横がWest Side Storyを上演しているPalace Theaterだったので、そこの窓口で買えました。もちろん定価。人気の公演だから、当日券が余っても上演までには売れると読んでtktsに流さないのかもしれません。実際、席はほぼ全部埋まっていました。

話は変わりますが、アメリカに来て驚いたことの一つに、スペイン語がすでに準公用語であったことがあります。公共交通機関での乗車マナーのポスターとか、商品のラベルなどにも、英語とスペイン語の両方で表記されていることは珍しくありません。喫茶店などに入っても従業員同志はスペイン語で話していることもよくあります。ちなみに、私は大学生のとき第2外国語でスペイン語を取ったので、挨拶やごく簡単な単語は覚えていますが、あとはもう大半忘れてしまいました…。なので、「この人たちが話しているのはスペイン語だな」というのは分かりますが、具体的に何を話しているのかは分からないレベルです。

West Side Storyではロミオとジュリエットを下敷きにしたミュージカルですが、ジュリエットに当たるマリアはプエルトリコからの移民という設定なので、スペイン語がしばしば使われています。むかし映画版を観たときは、こんなにスペイン語が入っていたという記憶がなかったので、ヒスパニック系の移民が増えているという現実をもとにした新しい演出なのかなと思っていたら、ウエスト・サイド物語 – Wikipediaにもそう書いてありました。具体的には、トニー(ロミオに相当)がマリアの家族と話すときに、スペイン語で挨拶して親しもうとしていたり、逆にジェッツ(アメリカ人のギャング団)がシャークス(プエルトリコ人のギャング団)を小バカにするような調子で使われていたこともありました。

あと印象に残ったのは衣装の色。ジェッツはオレンジ中心、シャークスは褐色の肌に映えるであろう(といっても、舞台上の役者の肌の色の違いは分からなかった)紫を中心に、主人公のトニーとマリアは青系でまとめてありました。またジェッツは男性中心のダンス(女性もいるが、短いタイトスカートなので後述のシャークスに比べるとあまり映えない)、シャークスはフラメンコ風のボリュームのあるスカートを生かした女性のダンスが印象的でした。

映画版のDVDは以下2種類が安価(2000円以下)で出ているようです。

ウエスト・サイド物語 [DVD]

販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン( 2008-11-19 )

時間:152 分

1 枚組 ( DVD )



ウエスト・サイド物語 (コレクターズ・エディション) [DVD]

販売元:20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン( 2008-04-18 )

時間:152 分

2 枚組 ( DVD )


そして、このミュージカルはやはり音楽がすばらしいです。有名な五重唱の”Tonight”は観劇後何日も経っても頭の中をリピートしています。特にマリアの声が高く澄んで微妙な暗さがあり、気に入りました。以下は映画版の”Tonight”。

映画版のサウンドトラックは以下。こちらも2000円以下で対訳つきとのことなので、日本に帰ったら買おうかなあ。

ウエスト・サイド物語 / サントラ

Sony Music Direct( 2004-07-22 )


以下は、開演前に撮った劇場の写真。

palace theater 01

palace theater 02

palace theater 03

ヴァギナ・モノローグス@俳優座 (2009.8.19)

カテゴリー : 舞台もの・イベント — 2009/08/23

戯曲を翻訳された小澤英実さんから招待していただきました。公式サイト。公演は23日までです。

私は、吉原真里さんのブログ女の体で笑うということ – キリンが逆立ちしたピアスを読んで、この演劇に興味を持っていました。

書籍版「ヴァギナ・モノローグ」(「ス」はつかない)というのも出ていますが、Amazonの解説によると以下のようにあります。インタビュー→戯曲(一人芝居)→書籍版という順序なんですね。

200人以上の女性に自らの女性器について語ってもらい、それをもとに著者が演じた一人芝居は大反響を呼んだが、芝居から新たに書き起こされた本書も、その衝撃的な力で全米を感動させた。

今回は一人芝居ではなく、フランス人1人を含む6人の女優のうち1人が話し、もう1人は手話で表現し、残りは舞台の上の周辺部で巨大なタペストリーを編むようなことをしていて、交代しながら6人のうち2人の女優が出てくるという形でした。6人の女優は以下の動画で見ることができます。

手話を取り入れた演劇ということで、観客に耳の聞こえない人がかなり来ていました。当日、俳優座に着いてチケットを受け取るために並ぶときにすでに、自分の後ろに手話で会話している人がいたり、会場側のスタッフと観に来た人が手話でやりとりしていました。舞台上には、声で語る人と手話をする人がいて、手話をする人が演技と手話の両方をするのですが(声を出す人が演技をしていた時間もあったかも?)、これには高い技量が必要だろうと思います。私は手話がわからないので、どこまでが手話でどこからが演技なのか分からないときもありました。この手話と演技の統合した動きというのが見ていてとても興味深かった。

内容はさまざまな女性が語る小さなエピソードの連続で、私が覚えている限りではこんな感じ。「洪水」(予期せぬときにいわゆる「潮吹き」状態になった女性の話、夢の描写も印象的)、イスラム女性が民族浄化の名の下に受けたレイプ、多種多様なあえぎ声(ネタとして、アキバ系の女の子のあえぎ声、アニメ声で「おかえりなさいませご主人様」なんてのもあった)、ヴァギナにされることでイヤなこと(タンポン、ビデ、産婦人科の検診)、ヴァギナを本当に尊敬している男性によってヴァギナに自信を持てるようになった女性の話、父親の知り合いにレイプされたり近所のセクシーなお姉さんに性的いたずら(これについては本人はよかった思い出として語っている)をされたりした女の子の話、ヴァギナ・ワークショップを受けた女性の話、などなど。意外にもレイプではない男女の普通のセックスのエピソードがなかったと思う。あるいはわざと避けたのか。「ヴァギナを本当に尊敬している男性によって~」の話も、挿入そのものについては触れていなかったし。

タイトルにもある通り、全体的に女性器の名称はヴァギナで統一されていたのだけど、一部に日本語の「おまんこ」を強調するシーンがありました。そのときは客席が明るくなり、女優さんが「さあ、リピートアフターミー、おまんこ!」と客席から声を出すように煽っていて、2回目くらいで何人か言った人もいたけど、私は言えなかった。ううむ、自分はこういう場では言えないものだなーという認識を持って帰りました。

今回の公演を見た方の感想としては、平松れい子演出の The Vagina Monologues/穏やかである政治性+ – 白鳥のめがねは演劇に詳しい方のようで、演劇のボキャブラリーが全然ないので、感じたことはあっても言語化できない私としてはうなずきっぱなしで読みました。演出の意図や、編み物の演劇的意味などについても興味深かったです。こういう演劇は、現代美術と同じで、ある程度周辺知識を得て見るほうが面白いと思いました。2009-08-20 – 偽日記@はてなも興味深かったです。

こちらは書籍版。

ヴァギナ・モノローグ

著者/訳者:イヴ エンスラー

出版社:白水社( 2002-12 )

単行本 ( 134 ページ )


映画版。

Vagina Monologues [DVD] [Import]

販売元:Hbo Home Video( 2002-06-04 )

時間:

1 枚組 ( DVD )


第7回Wikiばな~Wikiの起源へ~に参加してきました(2009.8.8)

カテゴリー : ネット関連,舞台もの・イベント — 2009/08/15

8月8日に行われた第7回Wikiばな~Wikiの起源へ~に参加してきました。書籍「パターン、Wiki、XP」に関して著者の江渡さんやレビューをした人などが本の内容に関係ある発表をするというもの。私が以前書いた「パターン、Wiki、XP」の感想はこちら

感想は、出遅れたので、すでに発表者および出席者によるスライドや感想ブログも、技術評論社による動画レポートも出ているので、もうちょっと個人的なことを書きます。

Wikiばなの起源とわたし

当日もyomoyomoさんがプレゼンしていましたが、Wikiばな自体がyomoyomoさんやWikiばな主宰者のshinoさん周りの人たちというか、2004年ごろにtDiaryとwikiを自分のサイトに入れて遊んでいたようなタイプの人たちが、なんとなく相互に交流があって始まったもので、私は最初のほうのWikiばなそのものには出ていないけど、その後の飲み会とかには大体出ていたんじゃないかなあ。それが現在も続いている(そしてかなりの割合で幹事をしている)yomoyomo上京飲みに流入する流れの一つというか。

Wikiばな本体にまともに参加するようになったのは、自己紹介/yucoによると、2005年末の第3回Wiki小話が最初で、このときは私の仕切りでタイ料理の店で懇親会をやったんだった。個人的にはその次の第4回Wikiばなが印象に残っている。このときはスタッフとして受付やらいろいろ動いた。内容はさまざまなWikiエンジンを開発している人が次から次へと出てきてプレゼンをするというもので、のちにライブドアに入社するmalaさんがMirrorManという、多分開発者のmalaさんしか使い方がわかりそうにない、わけわかんないけどなんかすごいオーラを出しているWikiをプレゼンしてたりしてた。それからWikiばなコアメンバーでSoftwareDesignでWikiに関する連載をやったんだけど、この時は目黒の技術評論社でのミーティングに出て言いたい放題して「Wikiつまみぐい」という連載タイトルを考えたり。でも原稿は書かなかった。

まあそんなわけで、何がいいたいのかというと、私はこのコミュニティでは割と古株で、今回もスタッフの方々は大体知り合いだったりとか、150人規模のイベントにも関わらずアウェイではなくホーム感があったんだよね。そのせいかどうか分からないけど、これだけ大規模になっても、Wikiばなに来る人は知らない人でも親しく感じるというか、「こんなマニアックなイベントに来ちゃってお互い物好きですね(にっこり)」みたいな親密な空気を感じている。この規模のほかのイベントでこんな風に感じることはない。

twitterとustの活用

一方で2年ぶりの開催ということもあり、変わったなぁと思うのは、当日遅刻して会場に入ったら、参加者の7~8割はPCを開いてなにやら書き込んでいたこと。みんなtwitterにハッシュタグ#wikibanaで書いていたのだった。私も買ったばかりのノートPC(アメリカ行きのために買ったものだが、軽めのPCを早めに買ってよかった~と思った)を持参して参戦した。それで、開催されていた時間帯ずっと@buzztterに#wikibanaが入っていたし、あとUstreamのほうでもチャットをしていた。こういう耳では話を聞きつつPCに入力してtwitterやustでチャットというのも2009年ならではだなぁ、と思った。

過去のWikiばなでは、各自がポジションペーパーを持ち寄る形式のときも結構手書きの人が多かったり、IT系勉強会なのに割とアナログな雰囲気もあるという感じだったけれど。メディアの取材とか動画中継のからみで、顔出しNGの人の扱いについて事前にWikiばなMLでも議論になっていた。IT系勉強会に取材が入るというのもちょっと前ではなかったんじゃないかなあ。これは最近のIT系勉強会全般に共通する流れなんだろうね。

建築/建築家/IT/ハッカー文化

発表については、「パターン、Wiki、XP」の内容が、建築家アレグザンダーが建物や街を作るのに使ったパターンランゲージという理論が、現在ではXPやWikiのようにIT分野で使われているというものなので、建築方面の発表もあった。なので、ITも建築も興味があったもののどっちもモノにならなかった私はWikiばな以来ITと建築の類似点と違いについて考えている。

「パターン、Wiki、XP」で強調されている、ボトムアップ、漸進主義、無名の質みたいなものには、一部のエリートがトップダウンですべて計画する西洋近代合理主義みたいなものの行き詰まりは反映してるだろうと思う。そういう意味でアジャイルとかWikiとかXPというのは、カウンターカルチャーのにおいがするもの(shinoさんの発表!)であり、また全体が見通せないときの戦略でもある。

ところで建築家というもののイメージとして、まさしく西洋近代合理主義的というか、建築家というあらゆる技術と美に通じた一人の人間が諸条件を統御して街のモニュメントとなる立派な建築物を作るという考え方があると思う。建築批評用語で「大文字の建築」という言葉があるけど、そんな感じ。結局、建築の世界で「無名の質」が根付かなかったのは、建築家という呼び名や彼らの仕事のやり方自体に記名で都市に名前を刻みたい人種がなるもの、という意味づけが入ってしまっているからではないか。そして世の中の大部分の建物は実は建築家が作ったものじゃなかったりする。無名の質が根付いた建物となると、今回の発表でも出てきたセルフビルドの沢田マンションとかになるわけだ。なのでアトリエ系建築家文化と世間一般の建築とは分けて考えたほうがいいんだろうな。そして建築のモノ的な性質のためにプログラムと比べて「ちょっとずつ作る」というのがいろんな意味で困難なのは前回書いた通り。

そういう意味では「無名の質」と都市計画はもっと相性がいいと思う。都市「計画」なんて大仰な名前がついているので、知らない人には「ゼロから図面を引いて街を作ることなんですか?」と聞かれたこともあるけど、実際のところ一から設計した街なんてほとんどなくて、現状をちょっとずつ変えていくのが大多数の都市計画だから。とはいえ細かいレベルでは結局個々の建物とか土木工事になるわけで、そのときに無名の質が反映された施設になるかどうかはわからない。

ITの世界では、ワード・カニンガムとか、Wikipediaのジミー・ウェールズとか、あとオープンソースプロジェクトのリーダーとか、Wiki的な不特定多数の参加者による貢献をまとめつつリードするという人で、ある意味有名建築家のような「名前が通る有名人(多くはハッカーとも呼ばれる)」を結構生み出しているなあと思う。そういう意味では都市計画家(官僚だったり自治体に所属していたり学者だったりする人たちで、どんなに有名でも、有名建築家より数段知名度は落ちるけど…)というのは多数の利害を調整するリーダーであろう。そういうタイプの建築家で有名な人ってあんまりいないよなあ。アレグザンダーは、建築でそれをやろうとして、パターンランゲージを考えたのだろうけれど。

まあそんなわけで、居心地はよかったしいろいろと考えの糸口になって、有意義な会でした。江渡さんをはじめとする発表者のみなさん、総責任者のshinoさんはじめとするスタッフの皆さん、お疲れさまでした&どうもありがとう!

パターン、Wiki、XP ~時を超えた創造の原則 (WEB+DB PRESS plusシリーズ)

著者/訳者:江渡 浩一郎

出版社:技術評論社( 2009-07-10 )

単行本(ソフトカバー) ( 224 ページ )


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