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『ルワンダ中央銀行総裁日記』服部正也(中公新書)

カテゴリー : 本・雑誌・漫画 — 2010/01/08

この本については、ビジスタニュースで山形浩生氏が絶賛お勧めしているのを読んで、一時帰国していた夫に輸入してもらいました。非常に面白かったのでお勧め! 経済の詳しいことはわかりませんが、分からなくても十分楽しめます。

昨年の初めにチェ・ゲバラの映画を観たのだけど(その1その2)、彼は、キューバ革命を成功させて、共産主義革命を”輸出”しようとボリビアやコンゴに行って、成功しませんでした。逆に、この本の著者の服部正也氏は日本の高度経済成長を日銀の中で経験して、その資本主義社会をルワンダに輸出して、ある程度うまくいったのだなあと思いました(もしルワンダに、その後の民族紛争やクーデターがなければもっと経済成長できたでしょうが、それは政治の話なので、経済の人である服部氏にはどうにもできない)。

資本主義社会というのは、ここで服部氏がやったように、商人や銀行などそれぞれの経済のプレーヤーが自由に競争できる環境を設計して、はじめてちゃんと運営されるようになるもので、ただ放っておいたらできるものではないことが分かります。ルワンダのように、資本主義社会に必要な会社組織や経済の仕組みを理解できる人材がいちじるしく少ない国ならなおさらです。服部氏は、ルワンダの一般の農民が日常生活のなかでいくら払って何を手に入れているか、もう少し収入が上がったら何を欲しがるだろうか、密輸をする商人は輸出入に関する手続きを簡素化したらどう動くだろうか、というところまでシミュレートして税率や制度を考えています。

服部氏が来る前からルワンダは、外国人の(特に旧宗主国であるベルギー人が多かった)アドバイザーと称する人間がたくさんいて、現代の国家の運営に必要な財政計画などは彼らが大臣にアドバイスしていたようですが、無能で自分の利益しか考えない人間ばかりだと服部氏は見ていました。彼らの作る予算計画はずさんで、さらにルワンダ人の税率は重く、外国人の税率は軽くなっていたといいます。また外国(アラブ・インド人が多かったよう)の商人はルワンダ人が持っていない外国とのつながりがある上に、輸入に関して特権を与えられていることにあぐらをかき、単一の商品を高い利潤をつけて売るだけの殿様商売で、より売れそうな商品を探して輸入してみることさえしていませんでした。彼らは、ルワンダ人は怠け者で、自分たちがいないととてもやっていけないと言っていましたが、輸入が自由化されて特権を失ってみると、商人としての能力も総じて低いものだったようです。

服部氏の考える、経済政策などの技術と目的の話も興味深かったです。服部氏は着任後、大統領と長い会談を持って、「あなたはルワンダをどのような国にしたいのですか」と聞きます。「たとえば、工場が立ち並ぶような国にしたいのですか」と。大統領の「こういう国にしたい」というビジョンに合わせて、経済をその方向に持っていくのが中央銀行の仕事だと服部氏は考えています。大統領は、ルワンダを農業中心に発展させたいと答えました。それまでの大統領のアドバイザーは経済的な制約ばかりを並べて「○○はできません」と言う人ばかりだったそうですが、まず国をどうするかというビジョンありき、経済政策などの技術はビジョンを達成するための手段にすぎないので、経済政策による副作用を受け入れなければいけない場合はあっても、「経済的な制約で○○できない」というのはおかしい、と服部氏は言います。

さらに、アフリカで何事も効率的に進まないことを「これがアフリカ流だ」と言って、アフリカ特殊論として片付けてしまうことに対しても否定的です(大西義久氏による増補2の文中にある服部氏による文章の引用)。途上国に行く人はえてしてこういうことを言いがちですが、服部氏は中央銀行の勤務態度が悪いルワンダ人職員に対して、自分の国の銀行員を育てるのと同じ基準でビシビシ叱るように、と各国から集まった中央銀行の上層部職員に言い渡しました。

また、本書の復刊に動いた人と服部氏の娘さん(現在フランス語翻訳家をされているそうです)の復刊裏話をmixiで見つけました。

まず娘さんのコメントはこちら→[mixi] Kigalisoupeさん | 「ルワンダ中央銀行総裁日記」復刊秘話[mixi] Kigalisoupeさん | 2009年中に書いておきたい日記① 「ルワ会オフ」と父の思い出 増補版での「増補2」を書いた大西義久氏は娘さんのだんなさんであることが書かれています。

復刊のために動かれたもけさんの日記では、複数回に分けて「『ルワンダ中央銀行総裁日記』企画協力秘話」が書かれています→[mixi] もけさんの日記一覧

読了したあとwikipediaで最近の周辺事情をお勉強。

wikipediaで見て、改めてルワンダの小ささに驚きました。それでも人口は約1000万人で世界ランキング89位なので、確か世界の国は180カ国くらいだったと思うので、真ん中程度です。また本書でたびたび言及される隣国ブルンジも同じくらい小さい。

また、映画『ホテル・ルワンダ』(公開要求運動がありましたね。私も観にいきました)関連ブログ、『ホテル・ルワンダ』のロビー内カテゴリ「ルワンダの歴史」でもルワンダの歴史が詳しく紹介されています。

ルワンダ中央銀行総裁日記 (中公新書)

著者/訳者:服部 正也

出版社:中央公論新社( 2009-11 )

新書 ( 339 ページ )


服部正也氏のほかの著書としては、『援助する国される国―アフリカが成長するために』がありますが、絶版で手に入らない様子です。残念。

援助する国される国―アフリカが成長するために

著者/訳者:服部 正也

出版社:中央公論新社( 2001-02 )

単行本 ( 257 ページ )



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