- 2009-03-01 (Sun) 2:11
- 文化(音楽・映画・イベントなど)
『ロシュフォールの恋人たち』とともにデジタルリマスター版でドゥミ×ルグラン=ミュージカル女優ドヌーヴという特集で、シネセゾン渋谷で見ました。
デジタルリマスター版ということで、色彩が古い映画にありがちな黄色っぽい色ではなく(あれはあれで、味として悪くない場合もありますが)、まるで最近撮られた映画のようにクリアできれいでよかったです。
一般のミュージカル映画のように、普通にせりふを言うシーンと歌い踊るシーンに分かれているのではなく、セリフ全部が歌っていて、こういうミュージカル映画は初めて見ました。
シェルブールの雨傘というタイトルは、フランスのシェルブールという小さな町でカトリーヌ・ドヌーブの演じるジュヌヴィエーヴ母娘が雨傘店をやっているところからなのですが、この場合他の小売店ではなく傘屋さんでなくてはいけなくて、それは雨が生きていくうえでの苦難の隠喩で、そういうものから男によって守られないと生きていけない彼女のありさまのことも示しているタイトルで、なるほどと思いました。
見る前は断片的な情報から悲しい映画なのかなと思っていたのですが、見てからの感想は、悲しいというよりも、人生ってそういうものだよね、人間ってそういうものだよね。という乾いたものでした。カトリーヌ・ドヌーブは神々しいくらい綺麗だし、ついでにお洋服も可愛いし、音楽も素敵だし、歌うようにセリフをしゃべる映画なのに、表現しているものは結構シビアというのが凄いなあと。
映画の登場人物を倫理的に批評してもしょうがないけれど、ヒロインのジュヌヴィエーヴは、16歳という年齢もあるけど恋愛におぼれすぎる傾向があり、友達がおらず、情緒不安定気味で、誰かに守られないと生きていけない女の子で、これで神々しいばかりに美しいカトリーヌ・ドヌーブでなければ単なる痛い子ちゃんの話になってもおかしくないけど、このくらい美人ならこんな性格でもありでしょ、と思ってしまう。
ちなみに同じ日に見た『ロシュフォールの恋人たち』よりもこちらの方がカトリーヌ・ドヌーブが綺麗だと思います。理由は『ロシュフォール』では前髪を下ろしていて、こちらではおでこを出していて、その方が似合うと思うから。
そして、こういう脆い女の子は結局労働者階級のギイとはやっていけないのだと思う。最終的に結婚した宝石商のカサールのような大人で金持ちの男性に守られて生きていくのがいいのでしょう。ギイが兵役について離れている間に、彼女は自分が常に男にそばにいてもらわないといけない女であることのほかに、母親を守るためにも生活レベルを落とせないこと、労働者階級のおかみさんとしてはとてもやっていけない性格であること、諸々を(たとえ無意識でも)判断して、決断したのだと思う。ロマンスものの映画だと、階級差を超えて結婚する恋人たち、というのがよく出てくるけど、この映画が言っているのは階級の差って越えるの大変だし、結局自分の階級に合った人と結婚する方がうまくいくよね、というリアルな話だ。
母親が単なる贅沢で世間体にとらわれた女でもないことは、お金に困ったら大事な宝石も売ってしまうし、ジュヌヴィエーヴが妊娠して世間体が悪いながらも娘を祝福することからも示されているし、ジュヌヴィエーヴが結婚するカサールも単なる成金の好色漢ではなく、大人で包容力のあるいい男であるところもいいと思いました。つまり、周りに悪い人が誰もいない。あえて言うなら一番悪いのはヒロインのジュヌヴィエーヴなわけです。
だから、愛し合っている恋人たちが引き裂かれた悲恋物だと勝手に予想していたのだけど、そうではなくてある時期熱烈に愛し合ったけれど、別れて、その後自分に合ったパートナーと共にそれなりに幸せにそれぞれの人生を生きていった、人生ってそういうもんだよね、という映画。
ちなみに、むかし韓国人の友達に聞きましたが、韓国では徴兵制があるので、男の子はだいたい大学生くらいの年齢で兵役につき、会えない間に女の子が別の人を好きになって別れるカップルがやはり結構あるそうです。
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