『ハルミンの読書クラブ』(浅生ハルミン)&『ナリコの読書クラブ』(近代ナリコ)
雑誌「彷書月刊」の連載「ハルミン&ナリコの読書クラブ」を単行本化したもので、内容は1本あたり3~6ページ程度で短く読みやすい古本を題材にしたエッセイ。最初は浅生ハルミンさん一人の連載だったが、途中から近代ナリコさんと交代での連載になったという。浅生ハルミンさんはもう17年も連載しているそうだ。
この2冊は、2001年以降の連載分を著者ごとに分けて2冊にし、それぞれの巻末に2人の対談をつけたもの。2冊とも新書よりほんの少し大きいくらいの小ぶりな本で、サイズはお揃いなんだけど表紙のイメージはずいぶん違う。大ざっぱに言うと浅生ハルミンさんはおもしろ系で近代ナリコさんはオシャレ系。ついでに表紙の紙質も違う。
浅生ハルミンさんの文章は、私はこの本で初めて読んだ。1966年生まれだそうだが、文章が若いというか、いい意味で子供っぽく、それが持ち味になっている人だと思った。アメリカの雑誌広告で、新婚旅行のときに泡風呂でいちゃつくカップルを見て「これまで私は、アメリカ人は他人とお風呂に入るときは水着を着るものだと思っていたのですが、新婚旅行のときはそうじゃないらしいと、イメージを塗り替えなければならないわ」(p.9)とか。この、カマトトぎりぎりのあやうさがこの人の味なんだろうなー。結構本のことというより自分のことを語っている部分も多い。本業はイラストレーター・デザイナーさんだそうだが、あまりそういう職業的な眼みたいなものも文章には現れていない(あえて出していないのかも)ように思った。資生堂の「花椿」について触れた部分で、デザインの参考になった、と書いているくらいかな。
近代ナリコさんについては、著作を何冊か読んでいるのと、最近は書評ブログが面白い。『ナリコの読書クラブ』も、この書評ブログに雰囲気が近いように思う。近代ナリコさんの方が浅生ハルミンさんより年下だが、ハルミンさんのような奔放さではなくて、特に美術方面の批評の伝統みたいなものを踏まえて書いている感じがする。
この本については「何を書いていないか」というところに個人的に興味が行った。たとえば「大きな新古本チェーン店に寄り、文庫本コーナーの「む」の棚を…」(p.73)と書いても「ブックオフ」とは書かないとか、コスメ大好きで雑誌の特集は熟読している、といってもその読んでいる雑誌名は書かないとか。別に、新しいものに対する固有名詞を全部避けているわけではない。冒頭のエッセイは今はもうない雑誌「Olive」についてだし、ショッピングモールの描写で「マクドナルド、スターバックス、シネコン、ユニクロ…」と出てくるところには出てくる。あくまでも古い女性文化については言及する人なのだけど、同時代の現代女性文化批評みたいなのはしないんだなーというスタンスが興味深いと思った。というのは私が現代女性文化について割と語りたい人間だからかもしれない。
しかし、2冊通して一気に読んで、その後この感想を書こうとしたのだけど、ある記述がどっちの本に書いてあったのか間違えて覚えていたりもして、文章をきっちり読めば見分けはつくけれどもやっぱりテイストの似たふたりだと思います。
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