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ブログ・ハンティング〈官僚〉(中央公論2005年11月号掲載)

はじめに

この文章は、雑誌「中央公論」2005年11月号で、この前号から始まっていた「ブログ・ハンティング」という見開き2ページの連載で掲載したものです。これは、時事問題やそのほか特定の話題について言及しているブログを5つ程度紹介して、ブログ界の反響を読者に紹介するコラムでした。連載はおよそ1年程度続き、私はそのうち6~7回程度執筆したと思います(執筆者は複数いますが、その中では私が最多執筆回数だったはずです。この辺の数値は分かればあとで訂正します)。

例えば、ライブドア問題についてマスコミでは叩き一辺倒だった一方で、注目を浴びてライブドアのサイトにアクセスが集中したにもかかわらずサーバを落とさなかったライブドアの技術力を評価するWeb系技術者のブログなどを紹介していました。今でこそ、J-CASTニュースなど、ブログ界隈の反応を拾うようなニュース媒体が存在しますが、2005年にこれを試みることができたのは結構早かったかなと思っています。というわけでこのコラムにも歴史的価値くらいはあるかなと思い、ここに私が執筆した分だけ順次掲載していきます。なお、執筆時には本名でなくペンネームを使っていました。

なお、最初は全部の原稿を揃えてから一気にアップしようと思ったのですが、一部デジタル化した原稿が手元にないこと(あっても、ゲラ直しを反映させる前の段階であること)などから、整形に時間がかかるので、整形が済んだものから順次アップしていくことにしました。特に、今回の〈官僚〉をアップするのは、私が最初に執筆した回だというのもありますが、この回で紹介した岡本全勝氏が内閣総理大臣秘書官になられたということもあります。

また、この記事中で紹介した「役人廃業.com」は2005年にこのコラムを書いた当時は本文で触れたようにインタビュー集だったのですが、現在は閲覧には会員登録が必要な公務員からの転職支援サイトとなっています。主催者の山本直治氏はサイトに掲載したインタビュー内容を2006年に『公務員、辞めたらどうする?』という書籍にまとめ出版しました。

以下、移転したブログはトップにリンクする際は2008年12月現在の新しいURLで掲載しました。ただしブログ名の変更があった場合も、記事中で触れたブログ名は2005年執筆当時のままにしてあります。また、誌面ではできなかったこととして、末尾にまとめてブログを紹介するだけでなく、文章中で言及したエントリに直接リンクを貼っています。

―以下、掲載した原稿。(直しも反映した最終原稿です)―

仕事観から政策論まで

選挙も終わり国会が召集される。その裏では官僚たちが動いている。官僚の仕事の大まかな内容は知っていても、激務とされる実態については知らない読者も多いだろう。しかし、ブログで日々の仕事について書いている官僚たちは、数は少ないが存在するのである。

まず挙げられるのが『霞ヶ関官僚日記』だ。運営するのは少々オタク系の若い官僚で、話題は官僚や国会に関するマスコミ報道への意見や、官僚の給与やその他の待遇についてなど、コメント欄も含めて現役官僚の生の声を聴くことができる。

2004年9月14日の「イギリスと比較してみる。」では、イギリスと比較しながら日本の官僚の仕事についてまとめられている。また、2004年8月8日の「質問趣意書のこと。」、同じく10日の「続・質問趣意書の話」などでは、国会議員が質問をするときに作る必要のある質問趣意書が、乱用されることもある実態について論じている。

官僚が最終的に目指す政策はどうあるべきかについて追求し、活発な議論をしているブログも存在する。経済政策において「リフレ派」を自認するbewaad氏の『Bewaad Institute@Kasumigaseki』では、毎回コメントも非常に多く寄せられ、経済に関する高度な議論が交わされている。

例えば9月1日には「そりゃ君らはデフレがうれしいだろうけどさ」と題して、前日の朝日新聞の社説に見られる経済観に、経済学の観点から異を唱えている。このほか郵政民営化や福知山線脱線事故のような政治や時事問題、書評やネット一般の話題までも幅広く扱っており、現役官僚の運営するブログとしては質量ともにトップクラスといえよう。

岡本全勝のページ』は、匿名のブログが多い官僚のなかでは珍しい例外である。本名のみならず職歴まで明らかにしており、2004年からは総務省大臣官房総務課長を務める。長年にわたり運営されてきただけあって、「法律ができるまで」や、地方財政の「三位一体の改革」、あるべき官僚の姿など豊富な内容だ。ただ、このサイトでは、「データの移し替えのミス」と表紙に断り書きがある通り、読みたいタイトルをクリックしても全く違う文章が置かれていることがままある。いわゆるブログツールを使っていない手書きHTMLゆえ起こったことだが、残念だ。

役所を離れて見えるもの

官僚といえば普段は激務だが、公費で長期間の留学ができることでも知られる。海外生活で開放的な気分になったり、普段仕事に追われて考える時間もなかったからなのか、留学期間中にブログを精力的に更新する官僚もいる。

おもうこと かんじること』の筆者は現在アメリカに留学中だ。インディアナ大学ブルーミントン校の行政環境大学院で学んでいる。「行政と経営」を大きなテーマとしており、企業の経営と行政の経営はどう違うのか、行政の精神とはなにか、などをアカデミックに考えている。このような思索は、その後実務に戻ったときにきっと役に立つだろう。

近年、中途退職する官僚が増えていると言われる。特に留学帰りの場合など、育成のために多大な税金がかかっていることも指摘されるが、職業の選択は本人の自由であることもまた事実だ。法律職のキャリア官僚として10年間の経験の後退職した山本直治氏(仮名)が、公務員からの転職を推進するべく運営しているウェブサイトが『役人廃業.com』だ。

役人廃業.com』はいわゆるブログ形式ではない。運営者による公務員からの転職経験者へのインタビュー集だ。いわゆる官僚だけでなく、地方公務員からの転職経験者のインタビューもあり、転職先も民間企業だけでなく、医師や起業など多岐にわたる。

「往々にしてキャリア官僚は自意識が肥大化しがちですが……自分を一社会人と考えて、どのように生きていくことが幸せなのかを冷静に突き詰めてほしいです」と、東大法学部から事務系官僚を経て民間企業に転職したK氏はインタビューで語っている。

官僚ブログは、現在ですら数が少なく、その大部分が匿名である。さらに「このサイトはフィクションです」といった断り書きがついていたりする。そうは言ってもすべてがフィクションであるはずもなく、大半は事実だろうが、たとえ職業が官僚だと明らかにしていても、組織人としての責任を離れたところで発言したいのだろう。

全般的に、今まで個人的な意見を聞きづらかった官僚の本音を手軽に読めるのは興味深いことだ。最近、民間企業でも従業員がブログを作り、顧客を中傷した記述をしていたなどのトラブルが発生しているが、一部のマナー違反のためにすべてのブログを禁止したり、自粛したりしないでほしいと願う。

行政は国会議員とのパワーバランスで成り立っている面もある。国会議員のような自分の名前を看板としている人はブログをかきやすい立場にあるため、もう一方の官僚の本音が読める場も存在してほしいと思うからだ。

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